令和5年度 国への予算要望に対する回答について

令和4年6月13日に自由民主党神奈川支部連合会を通じて国へ要望した回答について示されましたのでお知らせいたします。

1.高速道路通行料金について

(要望内容)

①長距離逓減割引の拡充(NEXCO3社)

高速道路と国道の交互乗継ぎを減らし、一貫した高速道路利用の促進を図るため、高速道路の整備延伸に伴う利用距離の長距離化に対応させ、現行割引(100km~200kmまで25%割引、200km超が30%割引)に加えて300km超の割引率を創設されたい。

②深夜割引の拡充(NEXCO3社・首都高)

 労働環境の改善に資するため、深夜割引については現行の午前0時から午前4時の適用時間帯を、労働基準法でいう深夜労働の時間帯である午後10時から午前5時までに拡充されたい。

③大口・多頻度割引を実質50%割引に拡充(NEXCO3社)

 現在、NEXCO3社の大口・多頻度割引は、車両単位割引の月間利用額30,000円超の部分のみが40%割引(自動車運送事業者のETC2.0搭載車の場合)で、契約単位割引10%と合わせて計50%割引となっている。このため実質割引率の平均は約40%である。一定額以上利用の場合に、30,000円以下の部分を含め、割引額が割引対象額の50%となるよう、割引制度を拡充されたい。

④首都高速における割引制度の拡充(首都高)

首都高速の料金水準や車種区分、車種間比率はNEXCO3社と同水準に整理・統一されたが、割引制度は統一されておらず一貫性に欠けている。NEXCO3社と同一の一貫した割引制度とし、利用しやすい高速道路ネットワークを実現されたい。

・大口・多頻度割引50%枠の設定

・深夜割引30%の導入

・NEXCOの走行距離と合算した長距離逓減割引の導入

・平日朝夕割引の導入

(国土交通省からの回答)

高速道路の料金については、平成256月の国土幹線道路部会の中間答申などを踏まえ、平成264月より新たな料金を導入しているところです。

この中で、料金割引については、実施目的を明確にし、生活対策、物流対策などの観点から、利用しやすい料金となるよう取り組んでおります。

高速道路料金の大口・多頻度割引については、令和3年度の補正予算も活用して、ETC2.0を利用する自動車運送事業者を対象とした最大割引率の拡充措置(40%50%)を、令和4年度末まで延長したところです。

また、首都圏の料金体系の見直しにあたっては、物流への影響などを考慮して、激変緩和措置としての上限料金の設定や、大口・多頻度割引の拡充を実施しております。

大口・多頻度割引の実質50%への拡充等のためには、大規模な財源の確保が必要となるため、慎重な検討が必要であると認識しています。

高速道路の料金割引の実施には、財源確保という課題もありますが、幅広く議論を行い、引き続き時代に即したものになるよう努めてまいります。

2.燃料価格高騰対策について

(要望内容)

産油国の原油供給不足に加えロシアによるウクライナ侵攻の影響により、燃料価格が高止まりのまま長期化している。こうしたことから、荷主への燃料価格高騰分の転嫁が困難であるトラック運送業界では、収支の悪化により安定した輸送力が維持できない状況が顕在化してきている。

こうした状況を踏まえ、軽油引取税の課税停止措置(トリガー条項)の凍結解除を図り、実態にあった摘要により実質的な負担軽減となるようされたい。

また、燃料サーチャージ制度の導入について、国から荷主団体等に働き掛け、協議に応じない場合には物流特殊指定並びに下請法に定める「買いたたき」に該当するケースとして強力に指導されたい。

併せて、行政による燃料価格高騰により窮地にある中小運送事業者向け相談窓口について、相談しやすい運用に改善されたい。

(総務省からの回答)

トリガー条項については、発動された場合、軽油の買い控えやその反動による流通の混乱、地方財政への多大な影響などの問題があると考えております。

(経済産業省からの回答)

トリガー条項については財務省、燃料サーチャージ制については国交省、中小運送事業者向け相談窓口については国交省がそれぞれ所掌しておりますので、経産省からの回答不可。

(国土交通省からの回答)

今般の燃料価格高騰に対しては、ガソリン価格168円を基準に35円まで補助するとともに、更なる超過分についても1/2を支援する等の「燃料油価格激変緩和事業」を年内の措置として実施しているところです。

 また、エネルギーコスト等の上昇分については、適切に運賃に転嫁することが基本的な考え方です。このため、国土交通省では、荷主企業等に対して理解と協力を呼び掛けるとともに、関係省庁が連携して、独占禁止法や下請け代金法の取締りの強化、下請け中小企業振興法に基づく指導、貨物自動車運送事業法に基づく荷主への働き掛けといった法的措置の実施等を行っているところです。

さらに、相談窓口については、全国全ての運輸支局等に設置され、広く事業者からの相談を受け付けております。

 引き続き、トラック輸送の安定的な輸送サービスが確保されるよう、トラック運送事業者に係る燃油価格高騰の負担軽減に資する取組を進めてまいります。

(公正取引委員会からの回答)

燃料サーチャージ制度の導入に応じないこと自体が直ちに問題となるものではありませんが、令和41月に、公正取引委員会は、労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇を取引価格に反映しない取引は、下請法上の「買いたたき」に該当するおそれがあることを明確化するため、「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」(平成15年公正取引委員会事務総長通達18号)を改正しました。

また、令和42月に、公正取引委員会は、労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇を取引価格に反映しない取引が独占禁止法上の優越的な地位の濫用に該当するおそれがあることを明確化するため、公正取引委員会のウェブサイトに掲載している「よくある質問コーナー(独占禁止法)」(https://www.jftc.go.jp/dk/dk_qa.html)のQ&Aを追加する更新を行いました。

公正取引委員会は、下請法違反行為及び独占禁止法違反行為の未然防止の観点から、上記の取組について周知徹底を図るとともに、下請法違反行為及び独占禁止法(物流特殊指定)違反行為に対しては厳正に対処していきます。

3.道路交通法改正に伴う大型免許及び中型免許取得における若年者の特例講習費用の一部負担について

(要望内容)

人材の確保に悩むトラック運送業界において、若年ドライバーの確保は重要課題であるところ、令和4年5月より、トラックの大型・中型免許やバス・タクシーの第二種運転免許の取得年齢を「19歳以上で普通免許の保有歴1年以上」に緩和する道交法の改正が施行されたが、この場合先ず受験資格を得るために必要な特例講習を36時限受講し、次に免許取得に際しては更に従来の教習時限の受講を要することになり、取得までに多大な費用負担が生じることになる。

そこで、この特例講習に掛かる費用についても教育訓練給付金や人材確保支援助成金等の公的助成の対象にして頂きたい。

(厚生労働省からの回答)

教育訓練給付については、雇用の安定や就職の促進に資する資格取得等を目標とする対象講座を指定している。大型免許等の取得を目標とする当該特例講習をカリキュラムに組み込んだ教育訓練講座については、指定基準を満たす場合に、指定を受けることは可能である。

 また、人材開発支援助成金については、事業主等が雇用する労働者に対して大型免許等の取得に係る当該特例講習を実施し、各種要件を満たす場合に、訓練実施に要した経費や訓練期間中の賃金の一部等を支援している。

 引き続き厚生労働省においては、人材不足に悩む交通運輸業界に対して人材確保の観点から支援を行ってまいりたい。

4.新型コロナウイルス感染症に対応した経済対策について

(要望内容)

神奈川県等が行う中小企業向けの新型コロナウイルス感染症に対応した融資制度は、新型コロナウイルス感染拡大により大幅な収入減となった多くの事業者が利用している(国交省調査で4割超)が、コロナ禍が長引き依然として厳しい経営環境が続き息切れリスクが高まっている。こうしたなか、一昨年度に3年間の無利子無担保による借入れを行った事業者の返済が近づいてきている。

ついては、これら借入について、返済の猶予・減免等により実質的な返済期間の延長を図って頂きたい。

(中小企業庁からの回答)

これまで政府としては、官民の金融機関等に対し、事業者から債務の条件変更等の申出があった場合には、実情に応じて迅速かつ柔軟に対応するように、繰り返し要請してきた。その結果、応諾率は約99%と、多くの事業者の申出が応じられている。

また、本年9月には、政府より官民金融機関等に、事業者の業況を積極的に把握し、資金繰り相談に丁寧に対応するなど、事業者のニーズに応じて、事業者に最大限寄り添ったきめ細やかな支援を引き続き徹底することを改めて要請したところ。

加えて、コロナで積み上がった債務の返済負担軽減のため、借換保証の創設も検討することとしており、引き続き、中小企業の資金繰り支援に万全を期してまいりたい。

5.「改善基準告示」の見直しについて

(要望内容)

働き方改革関連法により、自動車運転の業務に従事する者については、令和6年(2024年)4月より時間外労働の上限を960時間/年とされたところである

 その際、衆・参の付帯決議で、過労運転防止の観点から厚生労働大臣告示で定めているトラック、バス、タクシー運転者の拘束時間、休息時間等の「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(通称:「改善基準告示」)を見直すこととされたことを踏まえ、厚生労働省では「自動車運転者労働時間専門委員会」を設置し、この基準の見直しを検討しているところであるが、トラックについては本年7月頃を目途にとりまとめ、12月までに改正を公布、令和6年4月より適用するスケジュールと伺っている。

 おそらく時間外労働の上限規制に合わせた厳しい見直しになることが考えられるが、トラック運送においては、道路渋滞や荷主都合による待機時間、SA、PAが満車で駐車できないなどの自らコントロールできない外的な要因でこの基準が守れない実態があるので、単に厳しくするのではなく、こうした時間は拘束時間や運転時間から外すような柔軟な措置が必要であり、また、荷主の中にはこの基準の内容を良く理解していない者が数多くいるので、基準が守れないような発注等を行っている荷主に対しては国において厳しい働きかけを行える仕組みが必要であることから、これらのことについても合わせて検討されるよう要望する。

(厚生労働省からの回答)

自動者運転者の改善基準告示については、本年9月、公労使で構成される労働政策審議会の「自動車運転者労働時間等専門委員会」で見直し案の取りまとめがなされたところであり、今後は、本年12月の改正、令和64月からの適用を予定しています。

このうち、特にトラックについては、過労死等の防止の観点から、1カ月の拘束時間の短縮等の見直しを行う一方、トラック運転者の多様な勤務実態や業務の特性を踏まえ、慎重に検討を行った上で、

・運転中の災害や事故の発生に伴い、道路渋滞等が発生し、遅延が生じた場合の拘束時間や運転時間等の例外的取扱い

SAPA等に駐車できない場合における連続運転時間の延長の取扱い

 等を設けることとしています。

今回の改善基準告示の見直しの内容について、トラック運送事業者に遵守頂けるよう、十分な周知を行うとともに、指導に当たってもトラック運送事業者の事情に配慮して丁寧に対応してまいりたいと考えています。また、荷主への対応として、厚生労働省においては、トラック運送事業者の改善基準告示違反が、「荷主都合で発生した長時間の恒常的な荷待ち」によるものと疑われるなどの場合には、労働基準監督署が、発荷主や着荷主に対し、荷待ち時間を発生させないよう努めること等についての配慮を「要請」するとともに、そのような事案について国土交通省に情報提供することとしております。この新たな取組については、本年12月の改善基準告示改正後、速やかに実施する予定です。

(国土交通省からの回答)

「改善基準告示」の見直しについては、同告示を所掌する厚生労働省の下に設置された専門委員会において公労使の代表により検討が行われ、9月に改正案が取りまとめられました。

同案では、ドライバーの長時間・過重労働を解消させるため、拘束時間の短縮等が行われる一方で、やむを得ない事情によりSA等に駐停車できない場合、連続運転時間の延長を認める等、より実態に配慮した内容となっております。

国土交通省では、新基準が効果的かつ実効性のあるものとなるよう、厚生労働省、関係団体とも連携し、運送事業者、荷主等への周知を図ってまいります。

なお、国土交通省では、長時間の荷待ちなどの違反原因行為を行っている疑いがある荷主に対し、貨物自動車運送事業法に基づく措置として、「働きかけ」64件、「要請」1件を実施いたしました。(令和49月末時点)。その結果、違反原因行為が解消されるなど、一定の効果が発揮されており、今後も同制度を適切に運用してまいります。